耐震偽造 「支店長がリベート要求」姉歯建築士が本紙と会見
架空受注、7回捻出
マンションやホテルの耐震強度の計算書を偽造した千葉県市川市の姉歯(あねは)秀次一級建築士(48)は二十四日、東京都内 で産経新聞のインタビューに応じ、大口取引先の建設会社支店長から「一平方メートル当たりの鉄筋をあと二十キロ減らせ」などと、圧力を受けた経緯を具体的 に証言した。また、この支店長から「今月は四十万円ほしい」などとリベートを要求され、この建設会社から架空業務を受注した形にして現金を捻出(ねんしゆ つ)し、支店長に送金したとも証言。姉歯建築士は「力の上下関係があって(偽造やリベート提供に)何度も嫌気がさしていた。今は本当に申し訳ない気持ち だ」と話した。
証言によると、構造計算書を偽造するきっかけは平成十四年末ごろ。建設会社の支店長から、「建築主さんに『坪単価〇〇円でやる よ』と言われたので鉄筋量を減らしてくれ」と指示され、一平方メートル当たり八十キロから百キロ入れるべきところ、10%ほど減らして構造計算書を作成し た。
その後、支店長の要求はエスカレートし、正規の計算書を作成すると「ちょっと(鉄筋量が)多いな。一平方メートル当たりあと二十キロ減ら せ」などと数字をあげて要求。姉歯建築士が「これ以上はダメですよ」と拒否すると、別の建築事務所名を挙げて仕事を他に回すことを示唆した。
偽造の手口は、正規と改竄(かいざん)した書類を混在させる単純なもので、「プロが見れば一発で分かる」という。
この支店長は計七回ほど、各四十万-五十万円のリベートを要求。建設会社が、「構造検討料」「構造図作成」名目の架空の仕事を発注したことにして、姉歯建築士が請求書を送付。いったん建設会社が送金し、姉歯建築士が支店長にキックバックしたという。
姉歯建築士が「(架空業務分の)税金がかかる」と支店長に申し出ると、あらかじめ税金を上乗せした分を請求し、税金分を抜いて送金することになったという。
姉歯建築士は七、八年前、知人を通じてこの建設会社から初めて仕事を請け負った。偽造を始めて以降は、同社からの仕事が全体の九割以上を占めるようになった。このため支店長の意向に従わないと仕事がなくなると思い、偽造やリベート提供を続けたとしている。
姉歯建築士は、「建設会社からの圧力が始まったのは、その会社が特定の建築主と組むようになってからだ。坪当たりの単価は建築主などが最初から決めており、こちらはそれに従うしかなかった。建設会社は建築主の意向を受けていたのかもしれない」と証言した。
偽造件数については、これまで判明している二十一棟は認めたが、「それ以外は記憶がない。データを調べてみないと何ともいえない」とした。
今後予想される損害賠償請求については、「できる範囲で対応したいが、支払い能力に限度がある」と話し、刑事告発や捜査当局の捜査は「素直に受ける」とした。
■木村建設社長圧力「全くない」
耐震強度の計算書が偽造されたマンションなどを設計、施工した木村建設(熊本県八代市)の木村盛好社長が二十四日、熊本市で記者会見し、月内にも自己破産を熊本地裁に申し立てる方針を表明。姉歯建築士に圧力をかけるなどの行為は「全くない」と否定した。
同社長によると、姉歯建築設計事務所への設計委託は東京支社に任せ、社長自身は姉歯建築士と面識がなかった。居住者へ謝罪の言葉を繰り返したが、責任の所 在については「専門家である姉歯建築士の計算結果と確認審査機関の審査結果をそのまま信じてしまったことが原因」「足をすくわれた思いだ」と被害者の立場 を強調した。
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